チームビルディングの現場を体験する

小澤の職場体験シリーズです。
今回は「している株式会社」の長尾さんにお声掛けいただき、チームビルディング研修会の現場に行ってきましたですよ。で、まず最初に・・・

■チームビルディングとは

チームビルディングとは「よりよい関係を築きながら共通の目的、目標を達成する集団をつくること」です。※ファシリテーター・長尾彰より

はて、今まで僕はチームビルディングやってきたかしら、と思うとちょっと自信ないです。もちろん自分で会社やっていたときとかプロ野球チーム作るときとかチームの力で目標やプロジェクトを成功させようという気持ちはあったんだけど、なんとなくの感覚でやってきたという感じ。というわけでこのお誘いをいただいたときは非常に興味を持った次第です。

お世話になった人

  • 長尾彰さん


  • プロフィール

ファシリテーター静岡県生まれ。日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科(心理臨床カウンセリングコース)卒業後、東京学芸大学大学院にて野外教育学を研究。その後教育研修会社、玩具メーカー人事、人事コンサルタントを経て、2007年4月より「している株式会社」に所属。企業、職員室、スポーツチームなど、10 年以上にわたって300 回を超えるチームビルディングプログラムを実施。楽天大学のチームビルディングプログラム主任講師としても活動している。

<長尾さんが所属しているしている株式会社>

  • 事業内容:チームビルディング事業/人材開発事業/人材採用事業
  • 売上:約1億円
  • URL:http://www.shiteiru.co.jp/


とにかく長尾さんはかなりおもしろいひとでした。それは後ほど。さていよいよ、職場体験、開始ー!。

お世話になった2月26日の流れ

8時00分  集合
8時10分  朝食を食べながらミーティング
9時00分  現場入り
9時30分  研修スタート
12時30分 昼食
13時00分 研修午後の部スタート
16時00分 終了

朝食ミーティング

長尾さんとはtwitterとメールでのやり取りのみだったため、まずは顔合わせの意味を含めて朝食を取りながらいろいろとお話を聞かせてもらった。

一緒にうつっている女性は同じくチームビルディングとかの会社「株式会社アソビジ」をやっている中川綾さん。さて、いろいろ話を聞いたのですが、長尾さんは子供のころからかなり変わった生き方をしていたようだ。とにかく毎週末子供たちで計画してキャンプ。毎週末キャンプ。小学生の夏休みに至っては29泊30日のキャンプだったそうで。なにそれ。29泊ってキャンプじゃなくて軽い移住じゃないかと思うわけです。ちなみにそのキャンプは最後のほうは完全に野性児と化してテントなど使わず野外で寝るようになるとのこと。想像もつかないです。同世代なんですがだいぶ育ってきた環境が違うみたいで、そういう話を聞くだけで楽しいですね。また中川さんは元体育教師。一念発起で1年前の起業されたそうです。元教師の社長さんは初めて会いました。これまた興味深し。

いよいよチームビルディング開始

さてそんなこんなで時間になりましたので本日の研修先である会社にお邪魔します。研修先の会社は従業員数1200名程度の事務系の会社です。どうやら全4回の研修のうち今回が最後の4回目だそうです。

準備やら挨拶やらを行い、9時半に研修開始。参加者は30名くらい。みなさん現場の社員さんです。

まずは社長からの講話です。

10分ほどお話したあと、社員同士で今聞いた内容を5分ほど話し合い3問の質問を社長に行います。。どうやらこのあたりからすでに研修が開始している様子。ふむふむ。質問するまえに社員同士で話し合いをさせるのか。ここで自分たちの頭で考えさせるプロセスを経ることで理解が深まっているようだ。

これが終わるといよいよ研修開始。まずは30人を2チームに分ける作業。リーダーを立候補で決める。誰が手を挙げるのかなと見ていると、自主的に手が挙がりリーダー決定。次にチーム分け。方法は2名のリーダーが自分のチームに入れたい人をお互い話し合いの後に5名程度を指名。その後、指名されなかった人は入りたいチームに自主的に入るというやり方。このあたり、深い意味はわからんのですがオレだったら指名されなかったらさみしいなーと思った。なんか子供のころの酸っぱい思い出が蘇ってきたりした。

さて、チームが決まったら課題に取りかかる。今回の課題は、

  • 参加者は全員目隠し
  • 輪になった長いロープを2組使い、床に正方形を2つ作る
  • その正方形を面積が25%ずつ重なるように配置する

というものです。これは図が示されるのではなく口頭で伝えられるのがポイントで、各自の頭の中に出来上がるイメージ異なります。

出来上がり想像図1

出来上がり想像図2

実際、2つのチームの出来上がりがわかれました。ちなみに私は勝手に1を想像していました。これはとても重要なことを示唆しており、プロジェクトを遂行する時にまずはゴールイメージの共有をしないといかんということなのでしょう。確かに1をイメージしている人と2をイメージしている人が混在していたら、作業が大混乱ですがな。ふむふむ、この研修はこうやって研修参加者にいろんなことを気付いてもらうようにするのだな、とわかってきたぞ。

そして、作業開始。1チームが作業を行い、もう片方のチームはそれを見ている、という状態。


ロープはこんな具合です。


どうなるのかなと思っていると、やはり目隠しがクリティカルにやばい。

リーダーもメンバーもとにかく自分以外の人が何をやっているのかまったく視認できないのでひたすら混乱。ゴールイメージが共有できず、よってゴールまでのプロセスが共有できないわけです。さらに他の人が何をしているのかわからないし、もちろん自分もなにをすべきかわからない。見よう見まね、というのができないからしばらく呆然と立ち尽くす。ただしばらく経つとこれではまずいということで声掛けが始まる。ただ

「いまロープ触っている人?」

という質問に対して、思わず手を挙げてこたえてしまったりして、結果誰も見えてないからやっぱり把握できないという事態が起きたりしてとにかく外野的に見ている分にはついつい笑ってしまうんだが、実際自分がやったらどうかなと考えてしまう。

みんな立っている中でひとりだけ床を探している人がいたりします。

なんやかんやで、やり方もぜんぜんわからんまま、既定の15分が終了し、チーム交代。さて交代したほうはいままでの状況を見ていたからちょっとはよいかと思いきや、これがなんとほとんど変わらない。うーむ、まさに新規プロジェクト開始時の混乱が視覚化されている。このチームでおもしろかったのは、まったく最初から最後までなにもしなかったひとが2名いたこと。これの理由を僕が考えるには、

・リーダーもメンバーも視覚を奪われているため、全員がなにをしているのか把握できない。つまりなにもしていない人がいることが把握できない。
・シャイな人、消極的なは自分から自分がなにもできていないことを言い出せない。

の2点。これを克服するためにはとにかくチーム内の状況をしっかり把握すること。この場合視覚が奪われているのでしっかりと声掛けをしていくことなんだろうと思う。ちなみにこのチームではリーダーではないとても積極的な人がいろいろ指示をだし、一部の人だけで取り組んでいこうとしたが結局やはりあまりすすめることができず時間切れ。

さて、さらにここでチーム交代。そして、またチーム交代というように、1つのチームが15分×3回トライする。合計45分。もちろん、3回目にはかなり作戦が立てられてきてよい結果がでるようになる。ポイントは相手チームがやっている間に、片方のチームが行う作戦会議。ここで様々なアイディアが検討され、役割分担が決まっていく。前回のターンで自分がどう動いたかを報告し、それをもとに次回の作戦が立てられる。うーむ、まさにこれこそがチームという感じ。すごく真剣に、しかも楽しそうにやっている。そうよね、仕事もこうやって進めたら楽しいんだよねと思った瞬間である。

というわけで、だいぶ四角ができてきます。

これを見ていて僕が「なるほどな!」と思ったポイントは

  • 現状の把握
  • ゴールイメージの共有
  • プロセスをみんなで話し合い、共有
  • それを実現するための役割分担
  • 実行
  • 検証
  • 再度、修正し実行

ということを長尾さんが教えもしないのに参加されているみなさんが勝手にやっていることでした。3回やってもらうことはとても意味があるな、と思ったですよ。また、相手(敵)から学ぶというのももちろんやっていました。まさにプロジェクト遂行の縮図が45分に凝縮されており、いたく感銘を受けたわけです。

また午後も別のチームで同じことをやったのを見ていて思ったのだけど、リーダー格の人にもかなり特徴があり

  • 自分で考え指示をタイプ
  • みんなの意見を聞きながら決めているタイプ

に分かれていて、これまた世の中の縮図です。長尾さんに聞いたところ最も早くうまくいくパターンは

  • 的確な指示を出すリーダーがいるケース

らしいです。ただ、参加メンバーは自分で頭を使わず言われたことのみをやる、という傾向がでるらしく、うーむそれも微妙。まあ、絶対正しいという正解もないということですな。ちなみに見ていて辛かったのがこれ。

  • 1人の人が強いリーダーシップを発揮し指示をだしていくが、それが間違っている場合

これはもう取り返しがつかない。プロジェクトは失敗するし、メンバーは不満だらけになるし、見ていてつらい。しかし、これもよくあるパターン。世の中ではリーダーが人事権を持っているものだからよりどうしようもなくなる。残念すぎる。


そんなこんなで、進めていくわけですが、長尾さんは自分から「ああしたほうがいい」「こうしたほうがいい」ということは全く言いません。「こういうことを話し合ってください」というアドバイスはします。コーチというよりはファシリテーターです。しかし、まさに自分たちで気づいていくプロセスがそこにありました。最終的に3ターン終わってからも「こうしたほうがよかった」というような講評はありません。僕だったら言いたくなってしまうんですが、やりません。その代わりに参加者がどう思ったかということを話し合ってもらうわけです。ふむふむ。
そう思って「している株式会社」のサイトを改めて見たら長尾さんの肩書きはしっかりと「ファシリテーター」になっていました。なるほどなー。


というわけで、感想。

とにかく、興味深かったわけですよ。
まず自分に照らし合わせて考えたのは「もっとチームの人たちの話を聞こう」ということでした。いや、マネジメントスタイルはその人の人柄にもよるのでどれが正解ということもないんだけど、とにかく最初から最後まで何もしていなかった人の姿や、頭ごなしに指示を出している人の姿がなんかとても辛かった。と、自分のことはさておき、チームビルディングというのは日本ではまだまだ一般的ではないものの、これはやったほうがいいなあと感じたわけです。特にリーダーの立場になる人はぜひとも受けたほうがいい。
一方でチームビルディングの講師の職について考えると、これはしっかりと学ばないとできないなと感じた。僕が今やったらすごく指導臭くなってしまいそうだ。講師=「教える人」という枠組を抜けられていない。さっきも書いたがチームビルディングの講師はやっぱりファシリテーターなんですね。これは訓練が必要だ。熱血教師が当てはまらないことが確かである。

興味を持った人は

毎月、「している株式会社」では毎月無料チームビルディング体験をしているそうなので連絡してみてはいかがでしょう。
http://www.shiteiru.co.jp/index.html
と、しっかり恩返しの宣伝もしたところで今回はおしまい。